介護日記・施設拡大中

介護日記・施設拡大中 投稿私小説

真夜中にふと思う

人がよく死ぬと言われる時刻に目覚めてしまった。 いや。人がよく生まれる時刻であったか。 いずれにせよ、こうして目が覚めてしまった以上 さらに眠らんとするは不自然であり、 怠惰な気がする。 仕方なく起き上がることにした。 起きてからすることをしてしまえば、他にすることはない。 一昨日あたりから気になっていることを考えてみる。 人はよく真理や悟りを求める。 世界の究極の理解、生き方や考え方の正解みたいなものか。 ただし、その様なものが実在するかどうかは不明。 仮に、その様なものが見つかり、知ることができたとする。 それから、それを我々はどうするというのだろう。 まず、忘れないよう言葉として記録しそうである。 次に、記録したそれを繰り返し暗唱するかもしれない。 公式を暗記する受験生のように。 または念仏を唱える坊主のように。 それは紛れもないそれであり、もう疑う余地はない。 その教えの通り、ただただ実践するのみ。 もう何も心配はいらない。 これに頼ってさえいれば安心だ。 「ああ、私は幸せだ」 ーーーはて、なんであろう。 これは依存心そのものではなかろうか。 逆に言えば、かような依存心あるがため その様なものを 求めていたのではあるまいか。 信ずれば救われる。 宗教は満たされぬ依存心の産物。 だから、その様なものが仮に実在するとしても それに頼りきってはなるまい。 高校の倫理で習った、哲学者のカントがデカルトを批判したのもそんなとこだろう。 まあしかし、そんなことはどうでもいい。 誰も興味はあるまい。 今流行りの歌を聞きながら、 ミステリー小説でも読むことにしよう。 人間の真理(いや心理)はミステリー小説を読んでいるとよくわかる。 人がよく死ぬと言われる時刻に目覚めて。 いや。人がよく生まれる時刻であったか。 そのせいか禅問答のように他愛もないことを考えてしまった。