介護日記・施設拡大中

介護日記・施設拡大中 投稿私小説

ガンちゃんの人生相談

俺の名前は『ガーフィールド』。 「可愛いガンちゃん」 人間は気安く、そう呼ぶ。 「なれなれしいんだよ。俺を誰だと思ってんだーー」 まだ公園のノラ猫で、名前が無かった頃。 たまにこんな事があった。 3匹の先輩猫と陽だまりで休んでると、話しかけてくる猫好きがいる。 いつもここを覗きに来る、お兄さん。サバ缶を持ってきてくれるので、 俺は相談に乗ってあげることにした。 仕事の愚痴とか彼女ができないとかーーー。 俺は適当に聞き流し、にゃあにゃあ答えているだけだが、それで気が済むらしい。 しかし、今日はちがった。 「なあ、公園君、俺は格好いいよな?」 あ、公園君はお兄さんが勝手に俺につけたあだ名。 「にゃああ」 人間界ではどうか知らないが、サバ缶をくれるお兄さんは、 猫界では気前がいい格好いい男だと思う。 「どこかに、僕のササイな欠点なんか気にしないでつきあってくれる、 美人で清純ですなおな彼女が、いるよな?」 「にゃあにゃあ」 さあ。 人間の世には赤い糸というものがあって、誰かとつながっているって聞くが、 それが美人で清純ですなおかどうかまでは俺には解らない。 でも、お兄さんが深刻そうに見えたので、俺は頭をお兄さんの手にこすりつけて、 よしよしされてやった。 「些細なーーーそう、ササイな欠点だ。男は中身だよな!」 「にゃあにゃあ」 あまりに酷い外見で、見た目ではじかれるような事があれば、違うだろうーーー??。 猫だって、匂いの相性だけで相手を決めてると思ったら大間違いだ。 よく動けそうで元気そうな猫や、ぜい肉のついてない均整のとれた猫はとっても綺麗でほれぼれする。 外見はやっぱり大事だ。 しかしお兄さん、自分でも自分はかっこいいと言っているのに、どこかに欠点があるんじゃない? 「公園君に言っても解らないよな。あ、お前、捨てられるなんて、ついてないしねーーーー」 お兄さんは俺の前足を持ち上げ万歳させた。 アンフェア(ついてない)だって?何を言ってるのだろう。 それは殺人事件の被害者に使うことばだ。 俺はラッキーだ。 完全なる自己完結の世界に生きている。 他人にどう思われるかとか、恋人が出来るかとか些末な問題を超越しているのだ。 失礼な。 だいたい、生き方の問題なんだ。 愛してるとか、言葉で伝えなければ、誰にも伝わらない。 手紙だって、出さなければ相手に届かない。 結婚もだよ、婚姻届けださないと成立しない。 お兄さん、要は行動しろってことだ。 ラジオの人生相談も、結論はそんなところだろ。 「にゃあ」 俺は、お兄さんのほっぺたをなめた。 「わかった。わかった。じゃあ、いくよ。守るものがない猫はいいよな」 お兄さんはそうつぶやいて去って行った。 何だったのか? お腹もいっぱいになったので、俺は昼寝することにする。 俺はお兄さんのとの事は、直ぐに忘れた。興味なかったから。 おやすみなさい。